【法人向け】派遣会社のマージン率って何?実際のマージン率や下げるコツもご紹介!
派遣会社を探すときに法人企業の人事担当者が気になる項目に、「派遣のマージン率」が挙げられます。マージン率は、人材派遣で普段何気なく使用している用語で、手数料や仲介料などとの違いがよくわからないという方もいるでしょう。
なかには、マージン率をどのくらいに設定している派遣会社に依頼すべきなのか、どのくらいの金額やパーセンテージで交渉すればよいのか、相場を知りたいという担当者もいます。
そこで本記事は、派遣会社のマージン率の概要について説明した上で、マージンを下げる交渉のコツや下げても注力度を落とさない方法などを紹介します。
そもそも派遣のマージン率とは?
派遣のマージン率は、派遣会社に支払われる費用の割合を指したものです。法人企業は、派遣労働者に時給を提示する一方で、別に派遣会社に支払うマージンの割合が契約時に決まっていて、30%なら全体の3割を派遣会社に支払います。具体的には、派遣社員の時給に上乗せする形で、500円〜800円/[1時間]程度の金額を派遣先の企業へ請求する仕組みです。
派遣業界はマージン率が25~30%が多いですが、法人企業にしてみれば「30%近くも派遣会社に支払うくらいなら、派遣労働者に支払ったほうがよいのではないか」という疑問も出てくるでしょう。しかし、派遣のマージン率が派遣会社にとってただの利益になるわけではなく、派遣の交通費、教育費(研修)、福利厚生、広告・給与といった会社の維持運営費用にも使われています。
例えば、派遣会社はマージン率の中から、派遣労働者になる人を集めて説明会や研修をします。その際に、広告費用や管理費用、人件費などが捻出されるのです。また、派遣労働者にマッチした募集を探して担当者が提案するコーディネーターの役割をするための給与はマージン率からの支払いとなります。他にも上記で上げた職場の交通費支給や教育体制を用意して受講できる環境を整えること、有給休暇を支払うことなどもマージンからの支出です。
つまり、派遣会社にとってマージン率を得ることは、企業に対して安定的に優秀な人材を派遣し、派遣労働者も安心して働くために欠かせないのです。実際、25~30%のマージンを取っている全国の派遣会社であっても、営業利益は1.6%ほどしかないことが知られています。取り分に対して、利益になるのは、30%程度のうちの少しというわけです。小売業でも平均2%程度の営業利益はあるため、派遣会社はそれよりも低いといえます。
法人企業の人事担当者にとっては、マージンを抑えてコスト支出を抑えたいところですが、良い人材を長く効率的に提供を受ける関係を築くためには、十分なマージンを払うことが必要です。ここで、派遣のマージン率を計算する方法を提示しておきます。
マージン率=派遣料金の平均額-派遣労働者の賃金の平均額÷派遣料金の平均額×100
派遣会社により公開されているマージン率は、以上の方法で算出しています。そのため、あくまでも全国や1拠点の平均額であり、個別の案件や業種ごと、派遣会社の支店ごとの違いなどは考慮されていません。業種ごとや支店ごとは、公表している場合のみ、具体的な割合を確認できます。
また、マージン率を決める契約は、派遣会社との契約・交渉に委ねられており、マージン率が高すぎる場合は断わるケースもあるのです。

大手派遣会社のマージン率一覧
下記の比較表は、大手派遣会社における新宿拠点のマージン率を一覧にしています。
派遣会社名 | マージン率 |
テンプスタッフ | 25.0% |
リクルートスタッフィング | 30.7% |
パソナ(新宿拠点なし、港区本社のマージン率) | 32.4% |
アデコ | 28.2% |
マンパワー | 30.8% |
ウィルオブワーク | 33.2% |
スタッフサービス | 28.6% |
ランスタッド | 33.0% |
ヒューマンリソシア | 29.1% |
(パソナだけは新宿拠点がないため、東京都港区の本社で公開されているマージン率を記載しています。)
マージン率の大小で単純比較すると、最も大きかったのがウィルオブワーク(33.2%)、その次にランスタッド(33.0%)です。30%台を超えたのは4社のみで、残りはマンパワー、リクルートスタッフィングの順です。
逆に、マージン率が低い派遣会社は、テンプスタッフ(25.0%)、でその次にアデコ(28.2%)です。いずれも人気エリアであり、人材派遣の単価も高い新宿拠点では、25%を下回るマージン率の派遣会社はありません。そのため、30%前後を目安にマージン率の相場を考えておけば良いでしょう。
マージン率を下げるコツはあるのか?交渉する上で憶えておきたい2つのコツ
法人企業にとって派遣を導入する際にかかるマージンはできるだけ下げたいところです。しかし、交渉する場合に気をつけたいことがあります。まず、要望するマージン率を下げ過ぎると派遣会社の案件を受ける基準をクリアできずに契約が成立しないことです。派遣会社はマージン率から福利厚生や運営にかかるさまざまな費用を捻出するため、低すぎると維持できなくなってしまい案件を受けられません。
それから、マージン率を下げるために時給に手を入れると、そもそも優秀な人材となる派遣社員が集まらないという問題が発生します。以上より、無理な交渉は禁物なので交渉を行う際の情報やコツを以下に紹介します。
マージン率の交渉のコツ① 下げれて相場の-100円程度
マージン率の交渉で大事なことは、マージンの相場から-100円程度を想定することです。一般的に、派遣会社は1時間あたり500円くらいをマージンとして求めるところが多く、フルタイムの1日8時間労働の場合、4,000円/日に換算される金額が目安です。
その場合、どのような企業であっても下げれて400円/時間くらいまでです。400円/時間ということは、1日8時間換算で3,200円/日が実質的な1日のマージンです。相場の-100円程度にする理由は、1日8時間したときに800円程度の差が合計で出るためです。
例として、時給の相場を100円より多く200円で値引き交渉すると、1日のマージンが下がりすぎてしまい、300円/時は1日8時間換算で2,400円/日となります。あまり営業利益の大きくない人材派遣事業という分野では、厳しいマージンの金額です。そのため、無理な交渉は基本的に通らないと考えておく必要があります。
その上、派遣会社は企業側から無理な交渉を持ちかけられた際に、そのときだけ交渉決裂となるだけでなく、今後の関係性も悪化させてしまう可能性があります。なぜなら、派遣会社にとっては、マージンこそが唯一運営費用や利益に繋がる部分であり、そこを大きく削って交渉すると、その企業への人材派遣をするメリットが薄くなってしまうのです。以上の点に気をつけてマージン率引き下げの交渉をしましょう。
マージン率の交渉のコツ② 社会保険料や税金にもマージンをかけるか
マージン率を交渉する際のもう1つのコツは、社会保険料や税金に対してマージンをかけるかを話し合って決めることです。派遣会社との間でよくある交渉の内容は「スタッフの給与のどこにまでマージンを適用させるか」というものです。スタッフへ支払う給与といっても、税込なのか税抜きなのか、社会保険料も含むのか含まないのかによって、マージンの金額が大きく変わってきます。
事実、社会保険料や税金(所得税)をあわせると控除額は15%程度になります。全体が15%も増し、その20~30%となれば請求額に3.0~4.5%もの違いが生じます。例えば、マージン率30%の派遣会社が、時給約1,167円のマージン500円(全体で1,667円)だった場合、社会保険料と税金を計算すると1時間あたりの差額は+50円~75円、8時間労働で+400~600円、約1ヶ月(25日)で+1万円~1.5万円です。8時間あたりで比べてみると、500円×8時間で「4,000円/日」のところを、+400~600円となる「4,400~4,600円/日」になるという大きな違いがあります。
また、派遣会社が労働法の給与支払いではなく、人材の企業間取引という扱いになるため、2社間の取引には消費税も発生します。税込・税抜きの違いで±10%の差が生じて、どちらが負担するのかを決めておくことが重要です。
税金は先に決めていることも割とありますが、社会保険料に関しては、どの企業とも話合いになることが多いといえます。少しでも費用を下げたい場合、しっかりと確認してみましょう。

マージン率を下げることによって注力度が下がる可能性も
上記でマージン率の下げ方をお伝えしましたが、マージン率を大きく下げることが必ずしも良いこととは限りません。なぜなら、前提として派遣会社は利益を出すために事業活動しており、営業も利益率が高い案件を求めているからです。
営業といっても10〜50近くの企業を担当しており、その中で給与が高くかつマージン率が高い企業や案件から優先してスタッフを紹介します。派遣会社は人材派遣事業を行う営利企業で、利益やマージンを重視することは仕方のないことです。
しかし、コスト負担を下げることを優先するあまり、法人企業の人事担当者が交渉でマージン率を下げて、派遣会社における優先順位が下がってしまう恐れがあります。派遣先企業にとって、優先順位の低下がそのまま人材派遣の注力度を下げられてしまい、紹介の量や質が下がってしまう可能性があるのです。
企業のコスト負担面は下げられても、長い目で見ると人材の質低下や迅速な人材提供が積極的に受けられなくなり、総合的にはマイナスといえます。以上のことも踏まえて、マージン率を下げすぎないことや注力度が大事なこともしっかり押さえておきましょう。
期間限定でマージン率を上げる企業も多数
マージン率を可能な限り下げて、かつ派遣会社からの注力度合いを落とさない方法としては、月ごとにマージン率を調整する方法があります。企業には繁忙期と閑散期があり、人手が必要になる時期とそうでない時期を見極めるのです。比較的、どの企業も採用人数が多いのは3月・4月です。初春にマージン率を上げて注力度合いを上げます。一方で、それ以外の人手をあまり必要としない月は、可能な限りマージン率を落としてコスパ良く採用を進めていくような方法です。
この方法では、年中、同じマージン率で対応するのではなく、企業が特に人材を求める時期にだけ集中的にマージンを限定的に上げることが大きなポイントです。必要なときにだけマージン率を上げて注力度を維持しながら人材を確保できます。そこまで重要度が高くない時期では多少注力度が落ちてもコストを下げることを優先してバランスをとる形です。以上の方法をぜひ検討してみてください。
上記のポイントを踏まえ、納得のいくマージン率で採用を進めましょう!
今回は、派遣のマージン率について、交渉のコツや下げることの注意点などを取り上げました。
派遣のマージン率は、時給で500円ほどが相場となっており、下げても100円程度までが限度です。社会保険料にマージンを含めるかも話し合います。また、マージン率は下げすぎると派遣会社の利益が減って注力度が落ちるため、優先順位が下がるというデメリットがあります。期間限定のマージン率アップなどで調整することを検討しましょう。